『ワンダーウォール』を観る。BSプライムでの7月の放映時に話題となっていた渡辺あや脚本作品。この9月に立ち退きの期限を設定されている京都大学の吉田寮存続問題を扱っているけれど、1時間の枠に編み込まれたのは単に時節の話ではなく、まずドラマとしての奥行きが深く見応えがある。吉田寮ならぬ近衛寮の混沌を再現した美術も秀逸で、こたつの上に無造作に置かれたオカルト雑誌『マー』の完成度には笑った。間違いなく舞台そのものが立ち上がってくるのは、ただ脚本の力ばかりではない。そしてその脚本ももちろん優れた仕事で、誤解しようもない明確なメッセージを衒いもなく打ち込んでくる一方で、謎かけのこたえをさりげなくおいていく手つきに感心する。素晴らしい。