『手紙は憶えている』を観る。クリストファー=プラマーが寝ると記憶が飛んでしまう認知症の老人を演じたある種のロードムービーで、この老人が手紙を頼りに彷徨い歩くうち背景の事情が明らかになっていく。アウシュビッツ収容所とナチスの残党狩りを踏まえたサスペンスだが、主人公の覚束ない有り様だけでもドキドキしてしまうし、徐々に経緯が見えてくる手際もよく考えられている。見どころは自分を取り戻した主人公の表情で、クライマックスのその一瞬にクリストファー=プラマーの役者としての凄さが凝縮されていると言ってもいいくらい。