『散歩する侵略者』を観る。劇団イキウメの舞台と前川知大による小説を原作にした黒沢清監督作品で、黒沢清にしてはやけに平明なストーリーを実に黒沢清っぽい画面で撮っている。過去の黒沢作品を想起させるレイアウトがそこかしこにあり、「侵略者もの」っぽさの横溢する画面は始終傾いだ不穏な雰囲気で、しかし実はもとから黒沢風味だけれど、いつにないモブの使い方には新機軸も窺えて面白い。黒沢清の映画を知っている人には見応えのある作品になっているのではあるまいか。一方、その画風を知らない人にとってチープなSFもどきにみえるであろうことも想像に難くない。
松田龍平と長澤まさみの役回りは予告から思い描かれる通りで、実を言ってそこから外れるところがまるでなく、それは狂言回しでもある長谷川博巳もそうなのだけれど、もちろん異議はなくてハセヒロ最高。もともと黒沢清の映画というのは登場人物に関してはほぼ予定的に調和する傾向があるような気がして、そのあたりを考えるのも興味深い。