森見登美彦の新刊『熱帯』を読む。AmazonのWebマガジンで連載されていたときには更新を楽しみにしていたものだが、おそらくはその掲載ペースも駄目押しとなって休息の時間が必要になったということだろう。改めて刊行された本作は前半に往時のエピソードを活かしつつ、全面的に再構成されて『夜行』の気配も加え奥行きのある話に生まれ変わっている。映像的な描写が実にうまい。
Amazon.co.jpには当時から佐山尚一著の『熱帯』が登録されているのだけれど、この仕掛けも時をおくことでますます面白味が増して「少し縦長のサイズで、表紙には赤や緑の幾何学模様がいくつか描かれ」ているあたりがとてもいい。