『獣になれない私たち』の最終話を観る。答えを出さない会話と伸縮する時間軸で、これまででもっとも演劇的な感触のあるこの第10話はゆっくりとラストシーンに着地していくプロセスを楽しむ展開で、その手触りは心地いい。飲むことができないビールが出てきたらついには飲まれなければならない、鳴らない鐘は鳴らなければならない、というのがドラマツルギーというものだが、別に鳴らなくてもいいと言ってくれるのがこのドラマであるからには。
最後の舞台は那須高原ビールのブルワリーで、キーアイテムである「ナインテイルズキャット」のモデルになっているのは、殺生石の伝承に出てくる九尾の狐から名付けられた「ナインテイルズフォックス」というビール。九尾の猫とはなんとも不思議な生き物だけれど、山海経の九尾の狐と同様、これもまた瑞兆を示す神獣であるに違いない。