『獣道』を観る。伊藤沙莉が出演していなければ、どちらかというと敬して遠ざける種類の話ではあるけれど、まず、群像劇としてよくできており、意外に面白くて思わず見入ってしまう。格差と貧困が社会を分断しつつあるこの国ならBased on a true storyのキャプションにも説得力があって、ここで語られる物語は地方都市、ことに山梨あたりではまずありそうな話だと了解されるのではあるまいか。
ステレオタイプでありながら、これが奇妙に腑に落ちるのはそれがまさにステレオタイプであるからに違いなく、そういえば描かれる奇行と暴虐は太古の神話に通底する理不尽があって、それが意図されたものかは別として、ロラン=バルトのいう神話作用がこの物語に奇妙な説得力を与えているに違いないと考えたのである。