三谷幸喜脚本でクリスティの『アクロイド殺し』をドラマ化した『黒井戸殺し』を観る。本邦に舞台を移して黒岩涙香の小説みたいになっているとして、もちろんリスペクトを感じる翻案で、意外性はあまりないにして十分に面白い。そう言えば前回の『オリエント急行殺人事件』は前後編という長大なつくりに怖気づいてチラ見しただけだったのだけれど、野村萬斎のエルキュール=ポワロはそれっぽいし、キャストもセットも奢ったもので見応えがある。こういう仕立てになっていると、あくまで三谷幸喜の作品であり、ドラマから小説という層はあまりないような気がするけれど、ミステリというジャンルにとっても必要なことであるには違いない。