リチャード=ロイド・パリーの『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』を読む。同じ著者による『黒い迷宮』は未読だけれど、日本在住のジャーナリストとして東日本大震災が残した傷跡、わけても大川小学校での被害が何故これほど大きかったのかという問いに寄り添って記録された本作は、極めて慎重に推定事実を指し示しながら遺された人々の内面に比重を置いた内容で、あの日起きたこととそれがもたらしたものについて、改めて考えるよすがとなる良質なノンフィクションになっている。システムとしての行政に対する批判的な視点を提示しつつ、しかし人々の内面について一切の決めつけをもたないスタンスの一貫性はジャーナリズムの真髄をみるようで勉強になる。タイトルにもなっている霊的な体験の扱いは立体的なもので、いとうせいこうの『想像ラジオ』を思い出していた。