『アド・アストラ』を観る。監督のジェームズ=グレイがジョセフ=コンラッドにインスパイアされたと語っているだけあって、なるほどブラッド=ピットを主人公とした宇宙版『闇の奥』とみれば本作の印象をかなり的確に表している。深宇宙の入り口で消息を絶った父親を追う旅は内省的でありつ苦難の歩みで、死者達を葬ることもなく進み続けるその太陽系の道行きはドゥニ=ヴィルヌーヴかクリストファー=ノーランかという質感のある映像で見どころも多い。
SF考証、あるいは物理考証に関していえば、ちょっとまぁどうなのかというところが多くて、良くも悪くも雰囲気優先という感じはあるのだけれどブラッド=ピットの説得によって大概、どうでもよくなる感じ。とはいえ、人類が火星あたりにまで進出している地味めの近未来感はなかなかいい。