ザ・アウトロー

『ザ・アウトロー』を観る。設定からして『ヒート』を想起せざるを得ず、筋書きからもさして必要と思えない主人公の刑事の家庭の危機や強盗団の一味の家族模様が描かれるあたり確信犯的にそれをなぞっているのだけれど、単なるエピゴーネンではなく、ミステリーでいえばレッドへリングとしての描写であって、そういうなら全編でミスリードを企図しており、真相が隠されているという趣向。観ればわかるというほかない結末で、こちらとしてはちょっと困惑したのである。『ヒート』の本歌取りとしては技巧に走りすぎというべきではないか。ジェラルド=バトラーが鬼瓦のような形相でロサンゼルス郡の保安官を熱演しているのだが、よくよく考えればいいとこなしなのである。

邦題が『ザ・アウトロー』という謎タイトルとなっていて、日本語版のポスターにもわざわざ” THE OUTLAW”と打たれているのだけれど、原題は『Den of Thieves』で、思えば邦題自体がミスダイレクションとなっている。粗暴犯ではなく知能犯の話だと思えば、もとのタイトルの方が味わい深い。