『ザ・モンスター』を観る。ゾーイ=カザンがアルコール依存で娘を虐待せずにおられない年若い母親というこれまでにない役柄を演じて、単なるモンスターパニック映画ではない物語の奥行きを担っている。離婚した夫の元へ娘を送り届ける子別れのドライブの途中、山奥で狼を轢いて事故となり、救援に現れたレッカーの男と救急隊員が謎の怪物に次々襲われる。全編、ほぼ車中にあって時おり、母娘の辛い記憶がフラッシュバックするという構成で、アクションがあるわけでもないのだけれど、謎の襲撃が母と娘の相克と二重写しとなる語り口が見どころで脚本と監督の意図は達成されている。もともとゾーイ=カザンという役者は達者なのだけれど、子役のエラ=バレンタインもこれに渡り合う仕事で、登場人物の極端に少ない89分を成立させている。小品ながらよくできているのではあるまいか。