ブリグズビー・ベア

『ブリグズビー・ベア』を観る。赤ん坊の頃に誘拐されて僻地のシェルターで軟禁状態で育ち、成人してから救出された青年が、育ての親が作った教育用のビデオ「ブリグズビー・ベア」の物語を完結するため映画制作に奮闘する。

主人公のカイル=ムーニーがナポレオン・ダイナマイト的風貌で、ファンタジックパートはミシェル=ゴンドリーを想起させるしで、映画好きのために作られたような話なのである。特殊な境遇に置かれた主人公を扱いながら、周囲と異なる人間が感じる普遍的な居心地の悪さがストーリーを駆動するので、誰しも覚えがあるはずの切なさが立ち上がる。周囲の人間はいい人たちばかりなのだけれど、ことは世界との距離の話なので物語的な緊張はちゃんと成立しているし、そんなわけで読後感が爽やかなのも、とてもいい。