『ペンギン・ハイウェイ』を観る。2018年のアニメ映画。もちろん、森見登美彦の原作小説は繰り返し読んでいるのだけれど、あの繊細な美しさをアニメーションに写しとることができるのか、いやそれは難しいだろうという気分があって、これまで未見だったのである。これはほとんど杞憂だったと言っていい。
アオヤマくんの日常の記号が、どうしてこれほどまでに切ない気持ちを喚起するのか。人間が生を受けて、初めて死というものを深く考えるその時間についての物語を、こんなにも美しい感情だけで紡ぐことができるというのは、ほとんど奇跡的と思っている。さすが、上田誠の脚本はいちばん重要なところを映像におとしていて、不可避的に何度も涙ぐむ。