『去年の冬、きみと別れ』を観る。中村文則の小説の岩田剛典の主演による映画化。叙述トリックに類するミステリーを映像化しようというのがまずチャレンジなのだけれど、大胆な換骨を行なって物語の前半をほぼ別物としつつ、全体は原作に依拠しているといっても違和感のない話になっている。一方で岩田剛典のファン映画としても機能するつくりは商業的な考慮もされたもので、ぎりぎり判りやすさに振っているセンスもなかなかのものだと思うのである。たとえば人形作家の役回りは登場しないのだけれど、人形を持ち出してそれっぽい雰囲気を作ることだって可能だったと思うのである。一方、パスポートと札束については、そんなものをどこから調達したのかという疑問がなくはないとか、言いたいこともあるにして、全体としてはそれなりの仕事なのではあるまいか。