坂道のアポロン

『坂道のアポロン』を観る。川渕千太郎を中川大志が演じた2018年公開の実写版で、『くちびるに歌を』の三木孝浩監督がふたたび長崎を舞台にして美しい九十九島を展望する佐世保での1960年代を丁寧に描いている。いくつもの片想いを交錯させながら、主旋律は西見薫と川渕千太郎の一生ものの友情におかれ、文化祭でのジャズセッションをクライマックスとする王道の青春映画としての展開はいっそ神々しく、出演陣が高校生を演じている年齢の無理を感じさせない。いや、本当に。薫役の知念侑李は演奏のシーンでも指が動いていて、中川大志のドラムもそうだけれど、役者として立派だと思うのである。これにミューズとしての小松菜奈という鉄壁の布陣で、ラストシーンも秀逸。傑作ではあるまいか。