何故かこのタイミングで発表されたけれど、導入されるのはまだだいぶ先のことになる新紙幣に使われた津田梅子の肖像が、左右を反転してデザインされているという問題は、まさか単純な裏焼きではあるまいと思ったけれど、左右を入れ替えた上、着衣は右前になるように修正されているという手が込んだ話で、図らずもこの政権の体質を象徴的に現す事案となっていて面白い。どこかの職人が諷したのではないかとすら思えて、このまま採用すればよいのではないか。
無論、デザインや出版の業界では裏焼きといえば問答無用で忌避されるものだけれど、右と左を取り違えるのは間違いだという基本的な了解があってのことである。これを問題ないという人間とはそもそも話ができないが、官房長官の記者会見はその教養と常識の無さを露呈して、越えられないバカの壁を改めて意識させるし、そもそも事実を重視しないという政権の体質を如実に表している。
裏焼きで気になるのは左前だけれど、言うまでもなく左前という言葉には経済的に落ち目になるという意味もあって、これを右前に修正して糊塗しようというのは政府が経済統計でやっていることと同じで、笑うに笑えないというものではないか。