数学する人生

岡潔の著作の森田真生による編である『数学する人生』を読む。多変数函数論の巨人が数学は論理でなく情緒だというその内容からは、もののあはれというより集合的無意識がうっかり発露してしまったという壮大さを感じるわけである。そしてフランス留学時代の回顧は、梨木香歩の『村田エフェンディ滞土録』とほぼ同時代の精神を写しているばかりか、その終章の筆致と似ているようで、もうそれだけで涙腺が緩くなる。