『運び屋』を観る。クリント=イーストウッドが『グラン・トリノ』以来ほぼ10年ぶりの監督、主演で、人生には今日より新しい時はないということを教えてくれる映画。90歳でメキシカンカルテルの運び屋をしていた園芸家の実話に基づいているのだけれど、「今のハリウッドには自分のための役はない」という発言が俳優としての引退宣言と伝えられていた翁の前線復帰に相応しい役回りで、モデルとなったレオ=シャープのことは知らないけれど、『グラン・トリノ』の脚本家でもあるニック=シェンクがあて書きした以上は、伝記的な内容という訳ではなくて、クリント=イーストウッドその人が演じる他のないキャラクターが立ち上がっている。エンディングは署名にも似て、紛うことのないこの監督の読後感を残す。