『神は数学者か? 数学の不可思議な歴史』を読んでいる。現実を説明する数学が、やがてシンプルな数式で世界を予想しはじめる不思議さを根底において、数学が発明されるものなのか発見されるものなのかという問いの角度からその歴史を語っていく。開巻、神は発見か発明かという問いになぞらえている時点で、ある意味、ネタを割っているような気がするのだけれど、新潮社文庫のScience&History Collectionにありそうな内容で好み。ハヤカワ・ノンフィクション文庫。
Month: July 2019
温暖化
太陽黒点の活動が停滞期にあり、世界の火山活動がそれなりに活発でいわゆる核の冬効果さえあったかも知れない状況で、このところの全ヨーロッパの温度分布をみると、たとえば単なるヒートアイランド現象に温度上昇の責を求める矮小化が馬鹿らしくなるくらい壮大な気象の変動が起きているということが明らかで、何しろ避暑地であるはずの当地ですら、暑いものは暑い。
今年は早々に冷房の設置を決めており、しかし7月はいくぶん涼しかったのに工事のスケジュールが一向に確定せず、もしかしたら盆過ぎとも言われて気を揉んでいたのだけれど、どうにか8月以前に完了してひと安心。斯くの如くして温暖化は加速していくであろう。
当事者
山本太郎の参院選の戦いは周到な戦略でいくつもの勝利をもたらしたいうのがここまでの評価でいいと思うけれど、確かにこれまでの印象以上に打ち手の効果が熟慮された形跡のあることが後からわかる展開で、ちょっと感服する。その戦術的発想はシンプルであるにもかかわらず、政治の当事者を政治の場に送り込むことに集中することが、これほどの訴求をもたらすとは、こちらは想像していなかったのである。この上をいく部分を、山本の戦略家としての器と期待してもいいのではないか。そしてその方向は、ポピュリズムの対極にあるとみえる。
走れ大地を
『いだてん』を観る。副題はオリンピック応援歌のタイトルで、ロサンゼルスオリンピックへの壮行が行われる同時期に515事件が勃発し、憲政の常道は崩れ、日本は第二次世界大戦へと傾斜していく。麻生久美子がのちに田畑政治の妻となる酒井菊枝で登場して、ひと言も喋らないのだけれど面白い役回りでこの後が楽しみ。
TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ
『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』を観る。宮藤官九郎の監督・脚本作品には観るべきタイミングというものがあって、『中学生 円山』なんかはハズレとしか言いようのない感想を持ったものである。この映画のトレーラーを劇場で観た時は、映画の尺を埋めることができる素材なのか不安にさえ思ったものだけど、閻魔大王の審判による転生の繰り返しと地獄なロックだけでテンションを緩ませることなく125分を乗り切っているのは、さすがクドカンという感じ。何しろ、さして内容のない話なのである。まして清野菜名が出演しているとして、地獄メイクで顔の判別もままならないとあっては。
これは経費で落ちません!
今クールのドラマは何も追ってないのだけれど、NHKでやってた『これは経費で落ちません!』の第1話に伊藤沙莉が出ていたので観てしまう。だいたい多部未華子も好きである。しかし、生真面目な多部未華子とちょっとダメな伊藤沙莉という、これまでのフィルモグラフィーから直線的に期待されるキャラクターから一歩もはみ出していない役柄で、何の冒険もないキャスティングがドラマそのものを決めてしまっているのではないかと思えなくもない。実にNHKっぽいのだけれど、であるが故に期待値にあるのも事実でそれほど悪くない。
アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!
『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』を観る。『マスター・オブ・ゼロ』のアジズ=アンサリによるスタンドアップコメディのライブで、“Right Now”というタイトルそのまま、2019年の文化的文脈を踏まえ例によって人種の問題をそのまま扱って、絶妙な笑いを引き出している。#MeTooムーブメントの渦中、図らずも当事者となった話も冒頭に語られ、それを踏まえた今の心境がクライマックスに重なる構成もうまい。