贅沢貧乏 森茉莉の『贅沢貧乏』を読んでいる。当人が魔利と書いてマリアという名前で登場する自伝的な連作エッセイで、森鴎外に溺愛された娘の、父の印税が入らなくなって以降の生活を垣間見ることができる。貴族とは、貧富の属性と関係なく、その精神性を指すのだと再認識した次第である。贅沢をして貧乏なのではなく、貧乏だけれど贅沢という話。妄想に傾きがちな美文は面白く、系統図を作れば森見登美彦も連なることになるであろう。