選挙演説にヤジを飛ばした市民が警察に拘束されるのが異常な事態であることは、繰り返し指摘される必要があるし、この国もいよいよ法治の体を放棄しつつあると驚かなければいけないところだ。この一点をとっても週末の選挙は非常に重要と弁えなければならず、まず投票行動を。話はそれからだ。
Month: July 2019
mini礼讃
iPad Proをお嬢にあげてしまったので、最近はiPad miniの第5世代を常用しているのだけど、今やサイズは性能であるという考え方に積極的に賛成せざるを得ない。デザインとファームファクターの古臭さが一体、何だというのだ。まず、読書用端末として308.5gの重量は正義。だいたい、昔からちまちまとしたものが好きである。あまり具合がいいので、勢いでiPadOSのパブリックベータを導入しようかどうかと悩んでいる。
デッドプール2
『デッドプール2』を観る。『デッドプール』を観たときの新鮮さはさすがにないけれど一応、X-MEN世界に属していながら思い切りメタなセリフを投入してくる面白さは相変わらずで、未来戦士ケーブルの役で登場するジョシュ=ブローリンにサノスと呼びかけたりする。笑いの質は唯一無二のもので、高高度降下から一連のシークエンスは腹がよじれるほどだけれど、言うまでもなくかなりブラックなのである。監督のデヴィッド=リーチは『アトミック・ブロンド』のひとで、そういえばあの映画もアンチヒーローものとしてなかなか面白い。
替り目
『いだてん』を観る。「勝つことなど考えんでいい」と、かつて四三に言った実次が急逝し、一方でオリンピックはいよいよ勝つことを追求するイベントになっていく。金栗四三が熊本に帰ることを決心し、田畑政治とのバトンの受け渡しが行われる場面を、未だ何者でもない孝蔵に志ん生の『替り目』のサゲと同じセリフを言わせた上で重ね、いくつもの交差を描いていくクドカンの脚本は相変わらず見事で、何なら神がかっている。この上、戦争を挟んでオリンピックがどのような変質を遂げていくのか目を離せない。
三体
劉慈欣の『三体』を読み終える。SFの名作は数あるが、J=P・ホーガンであり山田正紀でありカール=セーガンでありアシモフですらある小説はなかなかあるものではないし、何より劉慈欣という中国の作家にしか描き得ない切実な現実があって、先行作品を想起させつつ独特の世界を構築しているという点では、マニアにこそ嬉しい読み応えを提供している。面白い。
三部作の序盤が語られたに過ぎないこの段階で、既に話は11次元にまで達しているわけだけれど、前評判によればそのスケールはどんどん広がっていくようなので2020年刊行予定の次巻を刮目して待つ他ない。原著は既に完結しているという点が安心材料である一方、中国と本邦の間に10年以上のリードタイムが存在する点は両国の距離感を示して興味深い。翻訳に大森望が入っているところに工程の事情も垣間見え、しかしお陰でリーダビリティは十分に確保されている。
ピーターラビット
『ピーターラビット』を観る。マグレガーさんの庭に出かけたピーターラビットのお父さんは捕まってパイにされてしまいましたという衝撃的なエピソードを正面から消化し、ドーナル=グリーソンを敵役に据えて、CGのはずのピターラビットをまったく違和感なく動かし、一体どうなるんだろうという事前の心配を3段階くらい上回るレベルでドタバタのコメディに仕上げているのはまず立派という他ない。
ポーターのファンの熱心なファンの中にこのドタバタが受け入れがたいという向きはあるかもしれないけれど、青いジャケットを着たこのうさぎはピーターラビット以外の何ものにも見えず、不気味の谷という言葉が懐かしいほどに違和感なく生きている。笑いどころも沢山あって、幕間に登場するJWルースター二世のキャラも最高に面白い。これはこれでよろしいのではなかろうか。
スケア・タクティクス
Netflixで『スケア・タクティクス』を観る。いわゆるドッキリカメラの類だけれど、たかだか20分の番組に4本のエピソードがあって、何しろscareなので、米国の社会的病質の発露という感じにいちいちネタがやばくて笑えないところが面白い。ここにはある種の生存バイアスがあって、番組になったケースはいいにして、シャレにならない展開だって中にはあるのではなかろうか。