なめらかな世界と、その敵

後れ馳せながら伴名練の『なめらかな世界と、その敵』を読み始めている。どうでもいいことだが、Mac OSのスマート変換は知らない間にハンナレンを変換してくれるほど賢くなっていて、魔法のようである。

小説のほうは2010年代を代表するSFという惹句があまり誇張にみえない超絶技巧で、例えば冒頭に配されている同名の短編では、あらゆる可能性からただひとつを選びとるロマンスの構造そのものが世界ごと構築されているという、何を言っているかわからないと思うけれど、言葉通りのセンスオブワンダーぶりでちょっとびっくりした。傑作であろう。

恋の予感?! ホテルリノベ奮闘記

Netflixで『恋の予感?! ホテルリノベ奮闘記』を観る。邦題はだいぶ酷いことになっているけれど、ジャンル映画としては標準的なラブコメ。ニュージーランドの廃屋寸前のB&Bを手に入れたサンフランシスコの女性が、現地のコミュニティのもてなしを受け、このホテルをリノベーションする中で恋と土地での生活を手に入れていく話。例によってお約束通りの展開だし、事件というほどの事件もないので、きわめて大らかな気分で観られるけれど、わざわざ観るほどのことはないと言えなくもない。

まほり

高田大介の待望の新作は『図書館の魔女 霆ける塔』というアタマしかなくて、発売日たる令和元年吉日を首を長くして待っている状態だったので、この作者が民俗学ミステリーを世に問うという発刊予定を見て、すっかり虚を突かれた格好になっている。四六変形判で496ページといえばそれなりのボリュームで、そういえば『図書館の魔女』のシリーズも起こらなかった事件の解明というテーマを内包して優れたミステリーになっているので、読む前から傑作に違いあるまいとわかっている。

恐怖の劇場

Netflixオリジナルの『恐怖の劇場』を観る。一話25分程度の7話シリーズで、本邦なら『世にも奇妙な物語』ということになるのだけれど、何しろNetflixだし台湾製作でもあるので、グロい部分はグロい。容赦のない『世にも奇妙な物語』という感じなので、面白いけれど視聴時の精神状態を選ぶ。

The Chosen Ones

ほとんど毎日、アメリカの威信を揺るがせている大統領が日本にトウモロコシを買わせたからと言って、これを称賛するわけではなく、大統領その人が気候変動ミーティングに現れなかったことを問題視するのがまともなメディアの態度だろうけど、どちらかといえば、かの国ではまともな方が多い様子。本邦渾身の追従は恥ずべき事実が広く報じられるわけでもなく、ただ知る者の侮蔑を買う次第となったわけだが、政治のレベルの低さを競い合う現実の前に震撼せざるを得ない。

一方、この国の報道は害虫の発生を踏まえて備蓄を積み増すという虚偽の発表を批判もなく垂れ流して、ほぼ機能不全となっているが、機能を全うしていたことがあったのかと問われれば、どちかといえば選良の腐敗が度を超しているのであって、第4権力の実相はこんなものだったかも知れない。

ジャイアン

存在そのものがネタであり、ジャイアンでもあるトランプの言動にはもう驚くことがないと思いながら毎度、驚かされているのが業腹だが、中国が買わないトウモロコシを日本が買うことになったとかいうカツアゲ紛いの話では案の定、本邦の総理大臣は当然ながら三下扱いで完全に足下を見られている。言葉通り、これを国辱と言わずしてなんとしよう。家畜用の遺伝子組換えトウモロコシが配給される未来まであと少しという理解でよろしいか。

ハンターキラー 潜航せよ

『ハンターキラー 潜航せよ』を観る。トレイラーを観ると、ちょっと荒唐無稽な潜水艦ものかと疑うのだけれど、爆雷の雨をすり抜けるシーンは本編には使われておらず予告用の煽りとみえる。パブリシティの方針はちょっといかがなものかと思わざるを得ない。水中戦そのものは厳密な考証を感じさせるものではないにして、それなりに真面目な雰囲気もあるので悪くないのである。

ストーリーはトム=クランシーと『エネミーライン』その他を煮詰めて122分にしたというところで、大衆向けの軍事スリラーの王道にある感じ。登場する米国大統領がヒラリー=クリントンを模している通り、現実が映画の目論見を追い越してしまったのは製作サイドにとっても誤算だったに違いない。冷戦終結でスパイものは下火となったが、トランプの世界では繊細な軍事的緊張など茶番にしかみえないのである。

それはおくとして、よく考えると冒頭の事件の顛末が全然、説明されていないとか、「詳しくは原作小説で」というような荒っぽさはあるし、どこかで観たようなシーンも多いのだけれど、盛り沢山で勢いはあるので飽きることはない。