スパイダーマン ファー・フロム・ホーム

『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』を観る。重い結末となった『エンドゲーム』から地続きのストーリーなのだけれど、トム=ホランド版スパイダーマンの軽やかさを保ちつつ、しかし時折、表出する喪失感は単独作品を越えたユニバースならではの重層感を生んいて、ハッピー・ホーガンの絶妙な配置によって世界観が補強されていることもあって、当方のような浅いMCUファンでも楽しめるものになっている。

MCUフェイズ3最終作という触れ込みだけれど、クリフハンガーはしっかり仕込まれていて、ディズニーとソニーの契約での対立同様、大人の世界の話はスパイダーマンにとってはあまり関係ないみたい。ゼンデイヤのMJはキャラが非常に立っており、トム=ホランドと並び素晴らしい。

遠のく帰還

『フォー・オール・マンカインド』の第6話を観る。前回、無人操縦で月面に設置された宇宙基地の運用は既に開始されているが、アポロ計画は重大なアクシデントに見舞われる。月面基地が登場したからといって人々の営みが変わるわけではないと言わんばかりのドラマ回ではあるけれど、例によって次回へのヒキは万全でソヴィエトとの宇宙開発競争というやや遠ざかっていたテーマにもそろそろ回帰していくのではないか(期待)

罪の声

野木亜紀子の脚本と土井裕泰の監督で映画化されるという『罪の声』の原作は未読だったので、その塩田武士の小説を予習している。グリコ・森永事件といえば同時代の話で、当時の状況に忠実だという事件の経過には記憶もあってリアリティの質は高く、30年前の事件を通じたサスペンスが十分に成立している。この長く入り組んだ小説を、どんな手際で映画の枠に収めるのか楽しみではあるのだけれど、星野源と小栗旬というキャスティングは意外といえば意外。

令和元年吉日

もともと2016年に発刊の予定だった高田大介『図書館の魔女 霆ける塔』はその後、地下に潜ってしまったかのように音沙汰がなくなり、今年5月、Twitterにオフィシャルアカウントが開設されたとき、プロファイルに「令和元年吉日発売」の文字をみて涙を流したものだが最近、この部分が書き換わって「続編『霆ける塔』についてお知らせします」となってしまったのは、つまりそういうことなのであろうか。嗚呼。

G線上のあなたと私 第6話 ほっとけないって愛ですか?

『G線上のあなたと私』の第6話を観る。物語は原作にオリジナルの要素を織り込みつつ、やや幅を広げながら変奏に入った印象で、ガーシュインの”Someone to watch over me”に話を収束していくストーリーがやはり絶妙。役者もそれに負けず、特に波瑠のモノローグは絶品というべきではないか。

耳栓

ひさびさにあずさで東京出張。AirPods Proはほとんど騒音のない状況でノイズキャンセリングをオフにして使うことが多かったのだけれど、電車の走行音と酔客の大声のある車中でアクティブキャンセリングの性能を遺憾なく発揮して、耳栓として有能であるということを証明する。

ヘルプ!

『いだてん』を観る。「私物化」というキーワードも飛び出して、特に最終章に入ってからは現実との共振が激しく目が離せない。それもこれも脚本家が正しく、2020の実相を見抜いているからに他ならず、実際がどうあれ、この物語の田畑政治はオリンピックを私利と権力欲のために利用しようとする者に対置されていて、ただそれだけで現在の政治を痛烈に批判することになっている。物語としては滅法面白いのだが、鏡像である現実については薄ら寒いというほかない。