『500ページの夢の束』を観る。ダコタ=ファニングが主人公の自閉症の女性、トニ=コレットが支援施設のソーシャルワーカーというキャスティングだけでも期待は高まる。スポックに自分を重ね『スター・トレック』を偏愛し、その脚本コンテストの締め切りに間に合わせるため原稿の束を抱えてはるばるロサンゼルスを目指すという縦軸のストーリーに、姉との関係を絡めたロードームービーで、派手な話ではないけれど自閉症スペクトラムの主人公が日常を過ごすために導入しているルールや感覚過敏の側面といったディテールがきちんと描かれており、ダコタ=ファニングの演技にも説得力があるので見応えがある。
主人公のスター・トレック脚本は427ページなので、邦題の500ページの由来は『(500)日のサマー』を連想させようというマーケティング施策なのだと思うのだけれど、まずよくそんなふわっとしたことを考えるものだと感心する。原題の『Please Stand By』は主人公がパニックを回避するために繰り返す呪文で、もちろん多義であり効果的に使われている。