グレイハウンド

『グレイハウンド』を観る。COVID-19の流行のかなり初期にオーストラリアで罹患したトム=ハンクスその人が、C=S・フォレスターの小説『駆逐艦キーリング』を原作として自ら脚本を書いた話題作だったのだけれど、感染拡大の影響で公開は延期となり、ソニー・ピクチャーズが配給権を放棄しApple TV+が7,000万ドルを投じて配信することになったという経緯がある作品。

御大は映画館で上映できないことを残念がっていたけれど、なるほどスクリーンであればまた迫力が違うだろうと思わせる映像で、91分というコンパクトな尺でありながら、Uボートとの戦闘に次ぐ戦闘で全体が構成されており、第二次世界大戦に余程、興味があるのだろうトム=ハンクスが脚本というだけあって戦闘時運用のディテールが密なので、かなり見応えがある。素晴らしい。

浮上したUボートとの超近接戦闘とか、夜間の友軍相撃とか、マニアックな企みがぎっしり詰め込まれている印象だし、主人公のクラウス艦長が食事を摂ろうとすると敵襲がある反復や細かい演出も効果的。一方、フォレスターの小説の原題が”The Good Shepherd”で、敬虔なクラウス中佐と護衛艦隊の牧羊犬的運用を重ねて想起させる優れたタイトルなのに、艦名そのものがちょっとイキった感じになっているのはどうなのか。