『ミッドサマー』を観る。A24制作、アリ=アスター監督作品。スウェーデンの小さな共同体を舞台として、白夜の9日間にわたり執り行われる「夏至祭」なる儀式を題材に、パラノーマルな現象ではなく、文化的文脈の異質さからくる恐怖を描いて話題となった映画。一歩間違えると、本邦には『TRICK』という先行作品がある分野ではあるものの、こちらは笑いに昇華する境地には至っていない。
日の沈まない明るい世界で、ハイキーに寄せた画面の作りが、いわゆるホラーの形式美から遠いあたりが目新しく、ケルト風の衣装や舞台装置はほぼハッタリだとして、同調圧力が集団のシンクロナイズとして表現される壮絶な場面は異様な世界観を現出させることに成功している。
それ以上に、現下のCOVID-19対応で集団免疫戦略を採用するとしたスウェーデンその国を舞台に、固有かつ異質な死生観を扱っているという現実との呼応が何より興味深く、時節には合っているとしてシャレにならない。うかうか、事実は小説より奇なりと思うところである。