天気の子

『天気の子』を観る。『君の名は。』は311を振り返ってモチーフの一部に組み込んだことにインパクトがあったけれど、本作ではパンデミック後を先取りしたような世界が描かれていて「おぅ」となっている。特別警報をともなう大雨の頻発は温暖化した世界の必然だとして、暗転を繰り返しながら展開するストーリーには同時代の社会とひとびとの暮らしの問題もさまざまに書き込まれていて、多重の読み方を要請する構造を備え、全体としてよく練られていると思うのである。

いつもの色相の精緻な美術を特徴とし、近年のコンピュータグラフィクスの進歩を感じる技術の投入もあって大画面で観るべき水準にある映像もいいけれど、世界はもともと狂っていると言われれば、なるほど人類の歴史は疫病の歴史だったと思って深く頷いたものである。優れた物語はときに現実を予言する。