東京の感染確認者数は引き続き最高を更新して197人となったが、民間検査を含む実態は不明の上、この数字自体も検査能力の限界に応じて既に意味をなさない状況とみえる。大阪や福岡といった他の大都市でも感染は急速に拡大している非常事態宣言4日目。状況としてはフランスの1ヶ月前と同じ時間軸にあって、既に医療現場は疲弊し、5月に入った頃には1万人の死者が出ていても不思議ではない。
NHKスペシャルは『瀬戸際の攻防』と題して例のクラスター対策班の取材をしていたけれど「瀬戸際」がもはや修辞として適切でない現実にあって、編集意図に関わらず、クラスター対策が失敗しただけでなく、なぜ戦略そのものを誤ったのかをドキュメントする内容となっている。自らの分析がトートロジーとなっているという自覚なく、そこに「賭けてみる」ことにしてしまった流れには、徹夜はあかん徹夜はと、ちょっと気の毒に思ったことである。
異様なのは、クラスター対策班の統制上のラインが不可視となっており、ことあれば学者たちが戦犯として祭り上げられても不思議ではない語り口であることで、この無責任な構造こそ事態を悪化させたシステムと考えるべきではないのか。