『コタキ兄弟と四苦八苦』を観る。この話、どこへ向かうのかと思いつつ、紛うことのない、さっちゃん回。例の三河屋が登場して、さっちゃんの鬱屈を引き出すあたり実にうまく、野木亜紀子の得意な生きづらさの告発が埋め込まれていてストーリーは自在。役者の力量を試すような設定、さっちゃんの五蘊盛苦とコタキ兄弟との因縁につながる結末はやはりいい。
Month: February 2020
動転
会社帰りに安いコーヒー豆を調達するためドンキホーテに寄ったのだけれど、あの独特の密度を誇る陳列空間にぽっかりとした空きがあって、いつもと雰囲気が違う。見れば積み上げられたトイレットペーパーの山が消滅した跡地のようなのだけれど、これは長期の篭城を決め込んだ人間が相当数いるということでよろしいか。追い詰められると、トイレットペーパーの欠乏が急に心配になるという心理はわからなくもないにしてその実、行動経済学の研究テーマになりそうなくらい不合理な話である。
場当たり
役にも立たぬ基本方針とやらを打ち出したとドヤ顔の舌の根も乾かぬうち、その方針に則ることもなく一律的なイベントの自粛要請、ついには全国一斉の休校とあって、これを場当たりと言わずなんなのか。
すべては、やってる感の演出のため、もちろん政策による調整を図ることもなく、必要な対応はすべて国民に押し付ける厚顔は安倍晋三以外にできるものではない。思い返せばクルーズ船の隔離でも同じ調子で結局、地方自治体が割りを食ったわけだが、何もやらないためなら何でもやるこの生物は一体、何なのだ。
幕張
またぞろ一斉にイベント・ライブ中止の動向を受けて、BiSH運営が幕張ライブのフル映像をYouTubeで期間限定公開している。告知にも使われているハシヤスメのサムネイルには渡辺淳之介の隠しようもない底意地の悪さが透けて、どこか油断ならないという気分もあるのだけれど、無論のこと観てしまう。うまい。
この360度でのパフォーマンスもまた、いうまでもなく素晴らしいものである。
無能の果て
検査をしなければ陽性ではないという厚生労働省では大臣が妙な咳をしているというから、本邦がその無能ゆえにバイオテロ国家と認定されるのも近いのではないか。イタリアにいる知人は、街を歩くと人の海が割れてモーゼのようだという。
もはや国内でのエピデミックは避けられないとして、全体を掌握していないどころか、自治体ごとの対応の温度差さえ明確でない状態で、NHKのニュースに出ている死んだような目の識者は根拠もない楽観論を開陳するのだけれど、韓国でもイタリアでも為政者が自分の口で説明を行なっているのを見れば、この国が例外的にリーダーシップ不在であることは明らかで、平時なら通る無理筋も、有事には通用しないと思い知ることになるだろう。そのために一体、どれほどの犠牲を払うことになるのか。
大芝浜祭!
『映像研には手を出すな!』の第8話を観る。そもそも学園祭は題材として尊いものだが、前夜の最終調整から当日の攻防と反省会まで、水崎氏の家庭に事情の解決を共鳴させながら合間に『ボーン・アルティメイタム』風のアクションと、いろいろ詰まっている。面白い。とにかくハズレがないので、chelmicoの『Eazy Breezy』がこのところのヘビーローテーションとなっている。
アス
『アス』を観る。『ゲット・アウト』のジョーダン=ピールの脚本・監督によるホラー。この映画の予告がよく出来ていて超常現象かと思わせるところがかなり怖いのだけれど、本編のリズムはだいぶ異なる印象。そして不条理は不条理のまま、説明が説明になっていないスタイルではあるけれど、強引に納得させる文脈の強さはあってこれはこれであり。自分が存在すら気づいていない、顧みられない人たちに仕返しをされるかもしれないという恐怖は本源的であるというのが本作の面白さで、我々は皆、共同共謀正犯ということであれば。