ターミネーター ニュー・フェイト

『ターミネーター ニュー・フェイト』を観る。ジェームズ=キャメロンが『ターミネーター2』から地続きの物語として、3だの4だのをなかったことにして作ったという触れ込みで、『デット・プール』のティム=ミラーが監督というのもあって、ちょっと間違った期待をしていた感じもあるのだけれど、いや、あれはない。

マッケンジー=デイヴィスのグレースは長身の切れ味でカッコいいし、リンダ=ハミルトンのやさぐれぶりも見どころではあるけれど、なかったはずの『T2』当時のシーンは技術的興味を除くと、おいおいというほかない展開で、あとはアクションだけ。いろいろアップデートされているとはいえ、どうしたって焼き直し感は拭えない。強化人間の設定は、テクノロジーに関するここ30年の思想的変遷を反映しているとみえなくもないが、まず掟破りと評価すべきではあるまいか。己が内なる厨二がこれを是とするとしてもだ。

コタキ兄弟と四苦八苦 六、世間縛苦

『コタキ兄弟と四苦八苦』を観る。罪人同士が肉体を引っ掻いて骨になるまで削りあい、そこに涼しぃ風が吹くと全員等しく生き返り、また肉体を引っ掻きあうという等活地獄。川沿いのタワーマンションにこれを現出させた脚本と演出の冴えはいいとして、何しろ骨になるまで削りあうような地獄の沙汰なので、うあぁとしか言いようのない展開に涼しぃ風が吹いて心が安まらない。それでいて読後感よく面白いのはさすがというべきであろう。いやもうね。

陰謀論

スイスの暗号機器の会社であるCryptoをCIAとBNDが秘密裏に保有し、NSAが作った脆弱性のあるアルゴリズムを仕込んで通信を収集、解読していたというニュースには驚く。冷戦のさなか、もちろんソビエトが民間の暗号機器を使っていたはずもないけれど、ユーザーとなった120カ国の秘密通信が筒抜けだったという話はどうやら事実で、これがフィクションなら陳腐な陰謀論として却下される設定ではないか。このような世界のことであれば、将来、GoogleがNSAと協働していたという事実が明らかになったとしても驚かない。

品質問題

PowerPointで使っているアドインソフトを新しい環境に再インストールしたところ、パスコードが通らないので延々とサポートとやり取りのメールをしたわけである。何しろ時差があるので一日に数歩の進捗の結果、ようやく認証されたときの嬉しさはひとしお。

アップデートの通知が来たのでこれに従ったところ、今度はVSTOのエラーで起動できなくなって心が折れる。

蔓延

買い物で薬局に行ったら、マスクの入荷はありませんという貼り紙がしてあって、この地方も世界の動きから隔絶されている訳ではないということを知る。石油ショックの昔から人間の行動には進歩がない。シンガポールではトイレットペーパーが品薄というから、やっていることはまるで変わっていないのである。

そもそも隔離が快適であるはずはないのだが、クルーズ船の騒動にはそもそも不十分な防疫体制での隔離が感染を拡大しているのではないかという疑念が拭えず、もともと政府が手を打っているというパフォーマンスのための施策ではなかったかと疑っているだけに気の毒というほかない。こういう不条理にも大いに既視感があって、有事にこそ人間の愚かさは可視化され、そこに進歩などない。だいたい、目前の危機に対応せず、発症者カウントの定義を変更しようと画策する政府では、国の斜陽も当然ではないか。

前作より進歩するべし!

『映像研には手を出すな!』の第6話を観る。これまでもその存在感を示してきた進行の金森氏のメイン回と言ってもいい内容で、仕事師というべきこのキャラクターが好きすぎる。『映像研』の面白さとは、つまりこういうものである。

街の狩人

『生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者』の続編が出ていたので、これを読み始める。学界の異端児という設定の主人公はひとつ間違えると単に思い込みの激しい人間と見えなくもなく、そのあたりが微妙にスリリングで、もしかしたら途中で投げ出すことになるかもしれない。そこをエンタテイメントとしての面白さに留め置いているのは、うまいといえばうまい。