KPI

パチンコ屋が自粛に従おうが従うまいが、結果として医療のキャパシティ飽和に影響を及ぼさなければ問題ない。その前提で検査と医療能力の拡大に注力すること以外、二の次だろうと考えているのだけれど、東京の検査実施数はこのところ減り続け、ICUの占拠率どころか病床の状況もよくわからない。この二週間に達成したことは、ただの自粛ムードの他に何だったのか。状況はデフレと同じくダラダラと続き、どこかでわりあいうまくやったとすらいいはじめるのではなかろうか。

医療現場を守れ!

そもそも感染拡大の程度はいまや観測不能の事象であるから、そのこと自体を論じるのはあまり建設的ではないとして、非常事態宣言と外出によって食い止めようとしているのはいわゆる医療崩壊であるのに、訳のわからないアベノマスクや雨ガッパ騒動に耳目が集まる一方、医療現場の窮状に焦点が合わず、特段の支援が進んでいないように見えるのはどうしたことか。

クオモが死者の数にもかかわらず称賛されるのは、攻勢を受けている医療のシステムを維持するという戦略目標を達成しつつあるからだし、毀誉褒貶のあるボリス=ジョンソンは”Protect NHS”という二語によって覚醒したとみえるのである。しかるに本邦の迷走ぶりは、手段を目的と取り違えるいつもの癖が出ていると謗られても仕方ないのではないか。

減速

この日の日中、原油は1バレル8セントの価格をつけ、先物は-34ドルというティッカーも目にして経済においても空前の状況にあることを改めて実感する。市場価格の水準はともかく、これが経済活動の減速の先行指標だとすれば、よろめきつつ前進はしているように見えて、急な制動によってほぼ慣性しか残っていない状況にあるイマココ。再起動のためにどれほどのエネルギーが必要になるのか想像もつかない。

自粛要請に従っていない事業者を公表するとことさら恫喝してみせたり、県の職員の給付された金銭を徴用して財源に当てたいと法の根拠が明確でない施策を唱えたりする自治体首長が次々現れて民度の低さを可視化するのは仕方ないとして、報道の程度もまた低いので同調圧力を強化する方向に作用しているようにしか見えない戦後75年。非常事態宣言宣言もじきに2週間というタイミングだけれど、医療の崩壊を検査不足で隠蔽したまま活動再開という、どの国も認めなかった驚愕の方針が選択されるのではないかという気がしてならない。ここしばらくNHKのニュースでは「爆発的な感染は起きていない」という言説が報じられていているのである。

ディストピア

武漢の都市封鎖に前後して路上に倒れたまま亡くなったとされる人の写真が報じられていて、同様のことが日本で起きることを想像はしていたけれど、少なくとも11件の変死が新型コロナウイルスに起因していたと報じられている。もちろん、見逃しはないという一部の論調は現場の実情に即しているわけではなく、これに少なくとも数倍する同様事例があると想像すれば、この混乱をデータとして記録することは余程、重要だろうと思わざるを得ない。そしてそれを実現するのは社会全体の余力というべき部分なのだろうが、この二十年、改革に名を借りた打ち壊し勢力がその余力を削ぎ落とした集大成としてのコロナ禍であれば、歴史は反省として語られることになるに違いない。

不在

例のマスクはノベルティーと同じ扱いで原産地証明も要らないし衛生上の保証も必要ないという話を嗤っている。厚生労働省は調達先を頑なに明らかにしないという話だから、検察人事を恣にするというのにも切実な動機があるというものである。まず、これほどまでに大掛かりに証拠の品を配布する事業であれば、どうしてバレずに済むと思っているのか、その思考の回路を訝しまねばならない。

非常事態宣言から10日が過ぎて検査の飽和状態は改善せず、起きていることも分からず、推定患者すら放置された状況で、都下ではPCRセンターの稼働に望みをつないでいるような有様だが、それも医師会の自主的な努力によるものであることは忘れてはならない。爆発的に増えるであろう陽性確認への対応が後手に回ることまでほぼ予測できるにして、何もされないというよりはマシという地点にある今日現在。

死の天使

NHKスペシャルは、コロナ禍において崩壊が始まっている医療現場の様子が伝えられる一方、ここまでほぼ無策としか見えない政府の専門家会議の副座長が、やることは決まっているのだから自治体のリーダーシップが大事だとコメントして中央の責任を素通りする地獄のような内容で、このところのNHKがいつもそうであるように素材とコメントの世界観がまるで違っているようにしか見えない。失敗しつつある作戦ではなく、現実に対応するのが今すべきことではないのか。三密、オーバーシュート、クラスターというジャーゴンも最早、害しかないと思えば観るのも辛い。

世界では抗体や免疫への期待を打ち消すような研究の結果が伝えられていて、with コロナ時代の想定がいよいよ現実味を帯びている。それ以前、出口戦略どころか、現状の把握すらできていない本邦では、思考停止の結果としてのゴールデンウィークがいったい何ヶ月続くのだろうか。

エンド・オブ・ステイツ

東京都医師会がPCRセンターの運用を開始するにあたって、25日に感染の減速が見えなければ東京はお終いだという悲愴な会見が行われたこの日、これまでで最多の200名を超える感染が確認されたことを受けて会見を行う都知事は、いつになく苦しげな様子で時折、実に嫌な感じの咳払いをするので慄く。こういうパニック映画を観たことがある。

NYの感染爆発は地下鉄の混雑が原因という研究が伝えられていて、それはそうだろうという感想しかないのだが、そういえば世界一過酷な本邦の満員電車は脅威ではないという専門家の見解があって、それは今も訂正されていないのである。それは最早、科学の言葉ではないのだが。

『エンド・オブ・ステイツ』を観る。ジェラルド=バトラー主演のFallenシリーズの最新作で、相変わらず話は強引だし、CGはハリウッドに珍しいくらい雑なのだけれど、お約束をひとつも外すことのないジャンル映画として想定通りの出来なので何も考えずに観られる。今回は主人公の生き別れの父親が窮地を助けるというパターンで、全編を通して見どころはこのニック=ノルティとドローン攻撃くらいなのだけれど、ほぼトレーラーでネタを割っている潔さは評価できる。