WWDC

朝起きるとmacOS 10はついに11となることが発表されている。もちろん、一番大きな話題はARMベースのAチップへの移行で、ほぼ15年ぶりにRosettaが復活するということだけれど、その競争力の高さゆえ、自らテクノロジー的ポトラッチを行なって成長していこうというこの会社はやはり稀有な存在であって戦略は興味深い。

しかし善良な見た目であっても、そこにあるのはやはり冷徹な企業の計算だ。最近、アプリ内課金を実装していないheyをリジェクトしたついでフリーのBasecampアプリをFree Riderと評したAppleのメールが物議を醸していたけれど、つまり自らのハードが開発者にタダ乗りしていることについて自覚がないことを露呈しているのがポイントで、時価総額がこの会社を傲慢にしていると言われても仕方ないのではないか。

そう考えると、Apple Siliconへのトランジションに無邪気に付き合うのもちょっと違うかという気がしていて、このところの信仰心の低下を自覚している。

スイッチ

『スイッチ』を観る。坂元裕二脚本の2時間枠ドラマであれば、自ずから期待は高まるというものだが、冒頭から結末の10秒までみっちり詰まったストーリーもダイアログも最高に面白い。何しろ、あのトレンディドラマのモデルとなった二人が別れ、検事と弁護士になった13年後の話をこの脚本家が書くのである。事件をもみ消そうとする圧力の出どころが上から二番目というあたりのディテールもシビれる。

監督は月川翔。阿部サダヲと松たか子もいいところしかなくて、クライマックスの長回しは圧巻。余韻に浸りつつ、ジュディマリの『LOVER SOUL』を聴いている。

ミッドサマー

『ミッドサマー』を観る。A24制作、アリ=アスター監督作品。スウェーデンの小さな共同体を舞台として、白夜の9日間にわたり執り行われる「夏至祭」なる儀式を題材に、パラノーマルな現象ではなく、文化的文脈の異質さからくる恐怖を描いて話題となった映画。一歩間違えると、本邦には『TRICK』という先行作品がある分野ではあるものの、こちらは笑いに昇華する境地には至っていない。

日の沈まない明るい世界で、ハイキーに寄せた画面の作りが、いわゆるホラーの形式美から遠いあたりが目新しく、ケルト風の衣装や舞台装置はほぼハッタリだとして、同調圧力が集団のシンクロナイズとして表現される壮絶な場面は異様な世界観を現出させることに成功している。

それ以上に、現下のCOVID-19対応で集団免疫戦略を採用するとしたスウェーデンその国を舞台に、固有かつ異質な死生観を扱っているという現実との呼応が何より興味深く、時節には合っているとしてシャレにならない。うかうか、事実は小説より奇なりと思うところである。

なし崩し

東京の感染確認は39人。このところ二桁どころか30人超えの趨勢で、なぜその数がさらに増えていかないのか不思議といえば不思議。一方、31人で発動した東京アラートはすでに歴史の1ページとして綴じ込まれて、県境を越えての移動自粛要請が緩和となってから初めての週末はこのあたりでも県外からの訪問客が増えている。

外国ではさらに状況が混沌としていて、アメリカもひどければブラジルもという塩梅で、分断と反知性主義の潮流にのって世界はこのまま暗黒時代に向かうのではあるまいか。

2010.12-2020.6

家に来た時は落ちぶれてはいたけれど立派な成犬だったので、実際の歳はわからない。持病と疾病の多かった10年のなかで、都合5回は死にかけて、いやそもそも命拾いをしてやってきたのだから運も生命力も強い男なのである。

家族には吠えず、外の人間、いや車に向かっていくことも辞さない向こう見ずには思い定めた何かを感じ、何しろウンチのスタイルがかわいくて、これは終生変わることがなかった。背中の丸まり。ごまお。

その前半生でどういう経験をしてきたかはついに知ることはなかったけれど、義兄弟4匹の生活は楽しかったと思う。ほとんど最期まで美味しいご飯を食べ、パトロールを欠かさず過ごしたものである。

長く哭いたという。忍耐強く、理不尽で暴力的な外界への怒りを肩のあたりに滾らせて生きてきた小さきものが、あまりに立派に生き抜いたので病に敗れたとは見えず、畏敬の念で挨拶を返す。この長い下りの船の行き着く先で、また会おう。

『三体』トリロジーの第2部となる『黒暗森林』が予約配信されたので早速、取り掛かりたいのだが、登るべき山の高さの前に立ちすくんでいる。第3部はさらに長いという話だから、三冊構成になるのではあるまいか。

深夜に動物病院に向かい、帰って寝る間もなかったので久しぶりの徹夜状態だけれど、まだ何とかなっている。ダメージが出るとすれば数日後になるということでない限り。外は雨。

Roam Research

Roam Researchの登録制限が解除されたというメールが来たのだけれど、つまりベータ開発が終わり商業ベースに移行したという話で、月15ドルというそれなりの課金の前に2週間のトライアルに登録してみる。

売りもののBidirectional LinksはObsidianでも立派な実装が達成されているけれど、Webベースのサービスなりのテキストの集積と暗黙的な関連も表示する機能は総体としてポイントが高い。

ただ、macOSのSafariでは日本語入力の挙動が使いものにならないという致命的な支障があって、iPadOSでは万全とは言わぬまでもそれなりに動くことを割り引いても、どうしようと逡巡する感じ。言うまでもなく、まだまだ開発途上ということには違いない。