あの頃、君を追いかけた

『あの頃、君を追いかけた』を観る。オリジナルの台湾映画は未見。山田裕貴が高校生という設定には多少の無理があるけれど、まっすぐに育った青年期の男を演じ、少しだけ世界を変えたいという大望を述べて嫌味がない。やがて、この直情が漠然とした不安の裏返しであることも明かされ、恋愛感情の行き違いが紡がれていく後半もいい。齋藤飛鳥のヒロインは、この一瞬のタイミングが撮られるべきだという説得力をもっていて、青春期を扱ったロマンスの王道というべき作品で好感がもてる。

物語のロケは諏訪圏から松本にかけて行われており、当方にとっては地元エリアなのだけれど、セットも使いながらどこか懐かしい地方都市の感じがうまく演出されており悪くない。さすがにランタンを飛ばすという風俗はこの地にはないのだが、それほど違和感なく挿入されたシーンは台湾版の再現とみえ、これはリスペクトでもあるだろう。よろしいのではないだろうか。

マイル22

『マイル22』を観る。マーク=ウォールバーグが能力の高さゆえ暴走気味のエージェントという設定で、あれこれいつも通りのキャラクターを演じている。『ローン・サバイバー』『バーニング・オーシャン』『パトリオット・デイ』といったマーク=ウォールバーグのこのところの作品を監督してきたピーター=バーグ作品。そのいつも通りに、トリックがあるといってもいい仕掛け込みの映画で、95分のコンパクトな尺にアクションも多いのでとりあえず飽きない。

『ザ・レイド』のイコ=ウワイスが主要な登場人物として出演しているのは多国籍資本ゆえの多様性とみえ、意外なことに舞台もジャカルタらしきエキゾチックな都市で製作費の使い方は練られている感じ。設定上は事件がアメリカ国外であることもポイントにはなっているのだが、本土外での武力行使というシチュエーションにさほど違和感がなくなっているのは、むしろ現実の無神経さに引きずられた結果とみえ、そっちのほうが恐ろしい。

MIU404 #6 リフレイン

『MIU404』の第6話を観る。志摩の過去が語られる展開話。香坂であったかもしれない九重のキャラが広がっていくのも楽しい。塚原あゆ子演出は過去の経緯と、悔恨によって捏造された記憶を往還して、ことの真相を明らかにしていく。物語の積み重ねがあってこその文脈が立ち上がってみえるのは脚本の手柄で、さりげなく三澄ミコトの名前も登場して世界線はどんどん芳醇になっていく。面白い。