クララとお日さま

カズオ イシグロの『クララとお日さま』を読む。裕福な子供の友達として作られたAFというロボットのクララが、店頭にいた頃から、やがて買われていった家庭でも外界の学習を続け、信仰をさえ持ってパートナーとなった少女のために動き、祈る。たとえば『わたしを離さないで』に近い雰囲気は確かにあって、孤児の物語であり、その使命を終える地点まで語られるという点でも似た構造をもっている。クララによる一人称の物語は、どうやら情報の処理がオーバーフローすると現れるボックスという現象によって主観画像が突如、変化することがあり、ぎょっとするような異質な世界が不意に立ち上がって不穏を演出する。その世界を一貫して描き切る筆力の確かさは今さらいうまでもなく、終盤の余韻は気づくと澱のように残っている。