『グリーンランド』を観る。クラークと呼ばれる巨大彗星の通過を人々が見物気分で眺めていると、フロリダに落下した一部がタンパを壊滅させる。選ばれし民間人にはシェルターを目指した脱出が指示される展開で、どうやら当局はこの事態を予期していた様子があるけれど委細はわからない。『ディープ・インパクト』なら政府側の隠密計画からExtinction Level Eventの可能性が露見するところを、主人公は夫婦の間に入った亀裂を修復できずにいる民間の建築技師なので、よくわからないまま指示に従って空軍基地を目指し、さまざまな困難に遭遇する。
ジェラルド=バトラーを主人公に配しながらアクション映画というわけではなく、生き残りのためにシェルターのあるグリーンランドを目指すオーソドックスなロードムービーというのがこの映画の正体なのである。『ディープ・インパクト』が『アルマゲドン』に比べると人間ドラマ寄りのパニック大作と評された日々は遠く、同じ事象を扱いながらもはやパニック大作という感じでもなくて、よくわからない事態の進行に戸惑うばかりという気分を扱っているのがパンデミック下のリアリティというものかも知れない。
恐竜を絶滅させた隕石の衝突よりも大きなイベントだというから、地殻津波によって結局は生き残るものはなしという結末を予想していたのだけれど、そこはそれ、ジェラルド=バトラーの映画である。監督は『エンド・オブ・ステイツ』でも組んでいるリック=ローマン・ウォーで、エンターテイメントの定石を踏んだ脚本ではあって、あからさまな伏線は必ず回収されると期待していい。