スナック キズツキ

『スナック キズツキ』を観る。原田知世がママをしている昭和レトロなスナックには、酒は置いていないけれど、箪笥の裏の綿埃みたいな感情を抱えたひとがふらりと立ち寄り、ソイラテやドライカレーに舌鼓を打つ。この無口な店主がやおらギターを取り出して生演奏を始め「今のあんたの気持ち」を要求し、客がこれに応えて心情を縷々歌い上げるというのはさすがに意想外の展開で、『御先祖様万々歳』を思い出したものである。

クライマックスでスポットライトに切り替わる亜空間演出は、このところの深夜ドラマの流行りだし、昭和っぽい雰囲気のあるナレーションも『武士スタント 逢坂くん!』ほど振り切れてはいないのだけれど、何しろ原田知世、浜野謙太、平岩紙、成海璃子と役者陣が分厚く、ことに平岩紙のクレーマっぽさにはリアリティがあって、これが後半のカタルシスを支えており、第2話の客として引き継がれていく趣向も面白い。

原作はこれもマガジンハウス刊なのだけれど、なるほどと思ったことである。引き続き観るつもり。