桜庭一樹の『東京ディストピア日記』は激動の2020年を思い返すためのよすがとして折りに触れて読み返しているのである。実際、愚行を繰り返しているだけのようで、あまりにも多くのことがあったので、読むたびに思い起こされることがあって飽きない。自分の日記を読んでそういえば、と思うことも多いのだが、酷い目に遭ったとしても、だいたい慣れてしまうというのは一面の真実である。
新潮の近刊に『パンデミック日記』というのがあって、52人の作家が1年52週の日記を書き継ぐという趣向で、いわゆる文壇の出来事など、以前のものは関心すらなかったのだけれど、この書名であれば読まないわけにはいかない。冒頭、正月を満喫している筒井康隆は呑気なものだが、徐々に高まる非日常の雰囲気は戦中日記に似て、この稗史も既に歴史的な価値がある。面白い。
そしてこの日、緊急事態宣言明けから1週間で東京はステージ4の水準に戻り、しかしオリンピックに向けてみて見ぬふりという思考停止の状況にある。対数軸の上昇は着実に進んでおり、やがて感染爆発の状況が到来するだろう。