ワクチンナショナリズム

秋、そのころはまだ完成が定かではなかったCOVID-19のワクチンの供給を本邦の政府が取り付けたかのような報道があって、そんなとこばかりは羽振りよく、相当に高い買い物をしたに違いないと思っていたのだが、年が明け、まさか正式な契約は進んでいませんでしたという話になろうとは、政府の能力をだいぶ過大に見積もっていたのである。イスラエルがロケットスタートで成し遂げた集団接種などはほとんど偉業というべきだが、見ている現実と温度の差が如実にあらわれている。

年末に、韓国政府が購入契約を結んだワクチンのうち70%近くは来年の秋まで入手できない、したがって次の冬までに集団免疫を形成するのは困難という記事があったのだが、それより出遅れた我が国がこれを超える仕事をできるとは、もちろん期待しないほうがいいというものである。既に欧州では、自国を優先しているように見えるアストロゼネカを締め上げんとする苛立ちが表面化して、ここでも英国対EUの構図となっているけれど、この種の緊張の渦中で本邦がうまく立ち回ることもまた全く想像できない。

そのワクチン自体、素性が分かり切ったものではないのだから、周回遅れで付いていくほうが、あとあとよかったということになるかもしれないというワクチン学の教授の言葉もあったけれど、ハナから逆張りにしか期待できないというのも国家的不幸というものではあるまいか。