『同志少女よ、敵を撃て』を読む。アガサ・クリスティー賞の本年度の受賞作という触れ込みで、独ソ戦を戦ったソビエトの狙撃兵という珍しい題材を扱っている。映画ならジュード=ロウの『スターリングラード』、ノンフィクションなら『戦争は女の顔をしていない』を想起させるところがあって、しかし和製小説ではこその読みやすさもあり、よくできているのではなかろうか。いきなり直木賞ということにはならないだろうけれど、エピローグに船での帰還が描かれる冒険小説が殊の外、好きである。そのあたりの定型もわりあい踏まれている様子がある。
アガサ・クリスティー賞が幅広いジャンルを募っているとはいっても、このミステリ作家の名を冠した新人賞としては題材が遠いのではないかと思っていたのだが、「敵」とは何かを叙述的に解明し、登場人物の動機に焦点を当てた物語だと解題されれば、なるほどという気もする。
この日、米国ではオミクロン株によって1日あたり100万人の感染者が出るのではないかという予想が語られる。これまでべらぼうなペースで拡大しているからにはないこととも思えず、重症化率がやや低かったとしても、これから大変な厳冬期を迎えることになる。