『町田くんの世界』を観る。原作の漫画は未読。高校を舞台にした恋愛要素のある物語ではあるけれど、主人公の町田くんはいわばアンチヒーローとして設定されている。勉強もできなければ運動神経も鈍いのだけれど、ひたすらに前向きでいい人というキャラクターによって物語を駆動する。町田くんに関わることで皆が心を開いていくという、ある種の聖者伝説としての物語類型をもっているので、話は古典的だとしても骨格が太く、世界の肯定というテーマにはシンプルで原初的な感動もある。
若い主演の二人の周りを芸歴の厚い布陣で固めるキャスティングは意図的なものだろうが、例えば前田敦子や高畑充希が高校の同級生や後輩の役なのだけれど、特に違和感も感じずハマっている感じがするのは実に大したものだと思うのである。一方、結末の展開はファンタジーに寄せないほうがよかったのではないかという気がしてならない。聖者が起こす奇跡が世界線から外れている必要はないし、ちょっと尺を取りすぎではなかろうか。