その長い待機については半年に一度くらい言及していると思うのだが、予告された『図書館の魔女』シリーズの新刊『霆ける塔』を待って既に5年、公式アカウントが令和元年と言ってから3年、2022年も終わろうかというこの日、『別冊文藝春秋 電子版』で連載2回目となる『異邦人の虫眼鏡』を読む。フランスの大学都市トゥールで、パンデミックのあとに一軒家を借りて農村の生活を送る作家の、1回目は庭の草木、2回目は自家製和食材についての博覧の記録で、まずその内容は面白いのだけれど、家主には執筆がすすんでいるかと問われて嘘を吐いたという一節があって、おいおいとなる。その諧謔がいいのだということは理解するとして、我々はあと幾つの夜を越えなければならないのか。
家人についてのささやかな言及は新鮮で、いくつか載せられた庭の花の写真については撮影者としてきちんとキャプションをつけているあたり、学究の人らしさがあって好ましい。