股旅新八景

長谷川伸『股旅新八景』を読んでいる。八景というからには八つの物語が編まれた短編集なのだが、今さらいうまでもなく、ひとつひとつの密度が高い。開巻から数段落の入神の筆致には感心しきり。

背後にヒヤリとしたものを感じた八丁の浜太郎は、永年の鍛錬で、気がついたときはからだをかわすとき、かわしたときは腰の長脇差がものを言う時だった。

書き出しから一筆書きのように情景が流れていくのには、文字通り息をつく間もないのである。いやいや。

この日、パラリンピックの児童観戦をめぐり引率の教師がCOVID-19に感染していたという騒動があり、日本語変換的には東京都特許許可局みたいな観戦と感染のせめぎ合いが続いている。千葉県は中止の考えはないという判断を夕方には撤回して以降の児童観戦はキャンセルされたようだけれど、この無意味な強情はいったい何がもたらしているのか、さすがに不思議に思える。愛知では、これまでの感染対策をひっくり返すような野外フェスが行われたという事案が話題となり、どこもかしこも狂騒と混迷のなかにあるというのが本邦の現在位置のようである。いったんピークを打ったかにみえる感染状況だが、遠からず再拡大となるだろう。