10万人あたりの患者の数はインドを超えてインドネシアに迫り、死亡者数では今や両国を抜いて、医療現場は既に患者の受け入れが困難になっているというのに、大都市で成人式をやるという話がまず信じ難い。無論のこと、普段会っていない昔からの友人とも接触しないというのが行動制限の基本であるからには。
何故、強行しようとするのかがわからなかったのだけれど、横浜市長選挙が今年行われるという話には、ある種の合理性を見出したものである。しかしその市長は中止の判断を行うこともなく、帯状疱疹で入院して式自体も欠席するのだという。特に敗色が濃くなると笑うに笑えない状況が出てくるものだが、この恐るべき責任放棄のツケはまず横浜市民が払うことになる。
そして夕方のニュースでは感染防止の配慮としてドライブインシアター方式で行われた成人式というのが伝えられていたけれど、友人同士の乗り合いで旧交を温めつつ参加している様子もあったりして、まず、ホラー映画の語り口を想起せざるを得ない。ウイルスの巧妙さは人間のだいぶ上をいっているのではないか。
伝えられるところによると最近の感染確認の急増には、いわゆる変異株の寄与はないようなのである。一方、都内での市中感染が確認されている以上、これから急速に拡がるということになるのだが、これまでのイメージのロックダウンに期待ほどの効果がないイギリスの様子をみると、無症状キャリアによる空気感染という公衆衛生上の悪夢が急増を引き起こすのではなかろうか。
いくつかの治療現場で試みられていた回復期血漿療法がその変異株の起源になっているのではないかという仮説があるという話を初めて聞いたけれど、淘汰圧を利用しつつ指数関数的に拡散するウイルスの戦略の凄まじさを人類の情報伝達スピードが本当に上回ることができるのか、現時点では確信が持てない。物量の攻勢に対して技巧で勝つことはできないと思うのである。