蔓延

倍加時間が1週間を切る状況であれば、すでに蔓延は起きているというべきで、いまさら蔓延防止等重点措置が事態を改善するとは思えない。全国でも2週間を切る状況で、年度替わりにあってどうやら事態は急速に悪化する変化点に来ている。一方、全国各地で聖火リレーが続き、誤ったメッセージが発信され続けているのも周知の通り。関西では半数以上が変異株に置き換わっている新規感染が、従来と同じイメージで減少していくことはないだろう。

この期に及んで、大阪駅では東京からの乗客が発熱していないかサーモグラフィーで調べるというパフォーマンスに市の職員が投入されているという話で、行政の無駄というならこれほど適切な用例はなく、科学の軽視とポピュリズムによってこの国は滅ぶであろう。

20周年

Accidental Tech Podcastを聴いていたら、Mac OS Xが20周年を迎えたという話題をやっていて、進歩というのは歳月の積み重ねの中にしかないものよなという気分になっている。実際のところ、Mac OS XのPublic Betaは2000年の秋くらいにインストールしていたと思うので、もう20年以上使っているわけだが、macOSになっても基本的な印象に変化なく、しかしハードウェアも含めて大いに変わっているのがAppleっぽい。随分と遠くまで来たものである。

トレンド

Googleの予測だからといって、特に精度が高いということはないだろうし、基本的にはトレンドを見ているだけだと思うのである。その予測が5月にかけて、これまでにない感染拡大を予想していて、成り立ちが指数関数であることを強く認識する。東京で一日1万人規模の感染拡大というのも、反動めいた人流の増加を踏まえれば特に不思議はなく、モビリティの動向は予測モデルそのものに組み込まれているのだろう。これまでの経緯からして、ほとんど無策なまま、これを成就するように現実は推移するのではなかろうか。

有隣堂しか知らない世界

本屋といえば有隣堂という育ちだからもともと馴染みはあるのだけれど、いつの頃からかYouTubeの偏ったおすすめが有隣堂のチャンネルを教えてくれるようになったので、ミミズクのぬいぐるみがサムネイルに映っているその動画を再生してみたのである。

するとこれが滅法、面白い。まずMCのキレが凄いし、登場する有隣堂の社員は個性的だし、編集は手が込んでいる。あまりに面白いので、日曜日の午後をかけてブッコローの出てくる動画を全て観る。R.B. ブッコローというのが番組MCの愛称で、ミミズクのパペットなのだが、中の人はいずれプロの語り手であるに違いない。そしていかにも有隣堂の書店員という面々が、相当に濃いキャラクターで、コメント欄はファンの投稿に埋め尽くされている印象で既に固定客を捉えているのである。登録数は本日時点で3万5千人に少し欠けるくらいなのだが、じき10万人を超えてもおかしくないと思う。おそらく腕の良いクリエイターと老舗企業が偶発的に起こしたケミストリーなのだが、かなりいい雰囲気の番組となっていて、未見のひとにはおすすめしたい。

ポチョムキン村

『俺の家の話』の最終話を観る。家族の介護の話に始まり、いろいろあって実は死生観そのものを問われていたことに気づく結末で、『隅田川』が繰り返し引かれていたことも回収する構成となっており、なるほどこういう物語であったか。すごい。

「ポチョムキン村」という言葉があるというのを、オリンピックの聖火リレーの開始にあわせ知ることになろうとは。かのグレゴリー=ポチョムキンがエカテリーナ2世の行幸にあわせ作ったハリボテの村から転じて、ソビエトか北朝鮮で行われるような理想郷を装うプロパガンダを指すようになったということなのだけれど、廃墟となった双葉町のそこだけ小綺麗な駅前付近をぐるぐると回る聖火マラソンを指すのは言葉本来の意味に近い用いられかたで、この国の転落も止まるところを知らない。決して消えることのないはずの聖火がちょくちょく消える事態も技術力の衰退をみるようで辛い。

そしてCOVID-19の感染拡大は、先行して非常事態宣言を停止した都市が先んじてペースを上げて、全国的に第3波を超える勢いを得るまでさほど時間はかからないのではないか。

ゴジラ シンギュラポイント

配信の始まった『ゴジラ シンギュラポイント』の第1話を観る。いったいどんな感じの話になるのかと思っていたのだけれど、円城塔脚本のダイアログが冒頭からいい感じ。出し惜しみのないストーリーもなかなかで、早くも続きが楽しみになっている。

新たに開拓したPodcastで、このところ『ゆとりっ娘たちのたわごと』をよく聴いているのだけれど、直近の配信は大九明子監督のゲスト回で『私をくいとめて』について語っているので、耳をそばたてている。やっぱり、いろいろとかっこいい。

私をくいとめて

『私をくいとめて』を観る。のんの最高の演技、いやその存在そのものが尊くて終始、涙を流していたような気がする。ありがたや。親友の皐月で橋本愛が出演しているのは知っていたけれど、大九明子監督ありがとうと心から思っているのである。画面は終始、面白みがあって、ただ素晴らしい。

綿矢りさの原作では『勝手にふるえてろ』の松岡茉優もよくて、作家には俳優の臓物をぐいと引き出す物語を書くところがあるのかも知れないけれど、この脚本であるぶん、その凄みはいや増してひとときも目を離せず、エンドロールの『君は天然色』も最後まで聴く。ざっぱーん。