8割

本邦の首相は緊急事態宣言の解除の方向を言明し、感染者も8割減ったのだから成果は出ていると、そもそも道理を理解していないことを曝け出している。残りの2割を詰めきれなかったことによって、遠からず感染爆発は起こり、今年のゴールデンウィークもなくなるのだから三次産業はいよいよとどめを刺されるだろう。いち早くGOTOイートを再開した宮城県の惨状が先行群ということになる。もとの木阿弥とあっさり評価してしまうには、失うものが大きいし、短期的にも得るものがないがヤケになっているのか。

遅行指標

何度も書いたことだが、何もせず放置しておいて感染者が減るということなど金輪際なく、現在の事態はこれまでの対策の通知表というべきなのである。変異株による感染拡大はオリンピックとの衝突軌道にあって、さすがにこれほどの間の悪さは滅多にないと思うけれど、それが選択圧というものであれば必然的な結果でもあるのだ。そろそろ諦めどきだと思うのだけれど、それをいうならタイミングはこれまでに何度もあったので、先行きは混沌としていて間違いなく当事者たちにもみえていることはあるまい。

病床使用率の低下をとって緊急事態宣言の解除というストーリーがメディアに流れ始めているのだが、ほぼ無理筋というべきでロジックも何もあったものではないレベルの話ということについては異論なしということでよろしいか。

霆ける塔

『図書館の魔女 霆ける塔』の発売を待つというだけの投稿も何回目か。2016年からまさか5年目になるとは思っていなかったけれど、令和3年の3月、その知らせはまだない。令和元年吉日の報からしても2年が経とうとしているのだから、月日の経つのは速い。この上、これも仮題のみ伝えられている『記憶の対位法』については一体、いつのことになるか。2019年に思いがけず『まほり』が刊行されたのは、ほとんど僥倖のような出来事だったのである。

不作為犯

これまでもほぼ自粛ベースの対策しか存在しなかったのは事実とはいえ、打つ手がないから非常事態宣言も終わりという話が流布されていて、これまたちょっと何をいっているのかわからないくらい馬鹿馬鹿しい言説だ。

今や愚か者の戦略と認定されている集団免疫のリバイバルと何が違うのかわからない。今さら暖かなくなってきたから感染も下火になるだろう考えているわけでもあるまいが、それをいうならブラジルは夏場でさえ犠牲者を積み上げていたのである。専門家といわれる人間の使われ方がこれでは、ソビエトのいわゆるルイセンコの悲劇そのままの体たらくというべきだし、フクシマ以降、とにかくこんな景色ばかりをみている。

書けないッ!? 〜仙川俊也の筋書きのない人生〜

『書けないッ!? ~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』の最終話を観る。最初から最後まで好きが詰まったドラマで、『俺の家の話』と並び今期の大収穫。あまりに面白かったのでTELASAのスピンオフドラマまで観て、これまた面白いので感動している。いやもう、この世界をシリーズ化して欲しい。スピンオフでも、空くん役の潤浩くんは最高。ゆんほって、ちょっと読めない名前ではあるけれど。

そしてそのスピンオフドラマのために、わざわざau IDを設定してTELASAに加入しているのである。とりあえず同じ豊島圭介監督の『妖怪シェアハウス』も観るつもり。

俺の家の話

『俺の家の話』の第8話を観る。無論のこと脚本への期待値はこの上なく高いのだが、深刻な題材しかないこの話がその期待を軽く超えてくる。点と点が繋がっていくこの心地よさはどうだ。役者もまず最高という他ないではないか。

変異株による感染拡大が秒読みであるはずの首都圏は、しかし「下げ止まり」という便利な言葉が生み出すモラトリアムの期間にあって、つまり明らかな増加カーブが描かれるまで下げ止まっているという評価が繰り返されることになるだろう。しかし、ウイルスに忖度は存在しない以上、再延長された非常事態宣言の期限にかけて、ふたたび上昇が確認される流れにしか見えず、結局のところ延滞を繰り返す策のなさに震撼している。これもまたフクシマの再演なのだが、この期におよび、手当たり次第に検査するというシンプルな方法が相変わらず妨げられているのは何故なのか。

10年

ひと昔と言うけれど、あの日からだいぶ遠くにいるという気もする。さほど変わったことはないような気もする。

この国の喉もとでの原子力非常事態宣言状況の継続だけは確かな現実で、100年経とうが忘却を許さないであろうことを考えると空恐ろしい。いつか、この手に負えない現実を中心にして、世界がぐるりと回る日が来る。