クラスター

地元の新規感染者が急に増え、県独自の基準で定めている警戒レベルがもっとも高い5に引き上げられて風雲急を告げつつある。近くの中学校に通う生徒の姿が見えないと思ったら、ひっそりと休校になっていて、この状況でこの情報開示の姿勢もいかがなものか。

何しろ田舎のことだから、市街の割烹で集団感染という話は光の速さで伝わり、大祭絡みか、商工会か消防団の宴会かと察しはついたのだけれど、市会議員の感染が発表されるにおよびTwitterのローカル世論は予想通りの場に与党系市長と議員が加わった大宴会で変異株が拡散したという噂を伝える。会見で事態の沈静化を語る当の市長はそんなことに言及してはいなかったわけだが。

なるほど、ことは来週の長野県補選に絡んでいるのである。結局のところ与党の選挙手法とCOVID-19感染対策は相容れぬもので、秋までに行われる解散総選挙では国中でこのようなことが起こる。

リスコミ

例のトリチウムのイラスト問題をきっかけとして、復興庁が風評払拭対策として電通に3年間で10億円の事業を委託しているという報道がされているけれど、つまり実態の定かでないリスクコミュニケーションとかいう枠があるから、ろくに考えてもないアウトプットが湧いて出てくる構図で、そうだろうと思っていたこととはいえ、復興という看板と自民党政権は何重にも底がある利権と腐敗の構造を作り上げているのである。

COVID0-19に関連しても「リスコミ」による教導が重要という、訳知り顔の意見が繰り出され、やることはTV CMという馬鹿らしさだが、これは味をしめているとしか言いようのない話ではないのか。

大豆田とわ子と三人の元夫

『大豆田とわ子と三人の元夫』を観る。坂元裕二脚本で松たか子主演であることの安心感。伊藤沙莉のナレーションで繋がる物語はみっしりとした密度があって切れ目なく面白い。言葉にしないものを抱えているひとの、話の断片がいちいちいいし、カラーグレーディングが凝っていて画面そのものがいい。予想もしていなかった方向に物語はすすんでいくんだろうと思うのである。もちろん、来週も観るつもり。

地元で1日に10人の新規感染が確認されて、そもそも5万人そこそこの人口でこれまで出ても2-3人という感じだったから、えらいことなのである。減る理由がないのだから、増えるであろう。

パラサイト

「復興庁は13日、東京電力福島第一原発の処理水に含まれる放射性物質トリチウムの安全性をPRする目的で作成したチラシを発表した」という短いセンテンスがまず信じられないのだが、トリチウムを奇妙なイラストで擬人化したのも「親やすさを持ってもらおうとした」からだという動機の説明がその上を行く。虚構新聞を引き合いに出すのも申し訳ないレベルだ。なに、電通に金を落とす口実だと知れば底の浅い言い訳であると知れるとして、徹頭徹尾この国の行政組織がおかしくなっているのはどの理路においても避けられない結論となる。税金に寄生しているとしか言いようのない、この部族はいったい何なのだ。

この日、大阪では新規感染確認が1,000人を超えて、あからさまなかたちで医療体制は崩壊し、間違いなく東京もその後を追っているのだが、ことほど左様にそこここでパブリックサービスが機能していないのである。

飽和

大阪は月曜日だというのに600人を超える新規感染確認となっていて、今週のどこかでは1,000人を数えることになるだろう。東京もそれを追うかたちで極端な増加が現出し、再び治療を受けることもできずに亡くなる例が増えるに違いない。検査の飽和傾向が見える頃には自主的に家に籠る人間も多くなるだろうけれど、変異株の実効再生産数を抑え込んでいくには厳格なロックダウンに準じる人流の減少がなければならないというのは既に見えていることだと思うのである。しかるに、現在の中途半端な状況は何なのか。

君は月夜に光り輝く

『君は月夜に光り輝く』を観る。Rebuildのhigeponさん回で最近、観た難病ものだけれど、ちょっとした捻りもあってなかなかいい、素直に高評価のものを観ておけば間違いないという話をしていたのだけれど、この映画自体はそれなりにストレートな難病もので、しかし発光病という架空の病を設定したことで、病気とそれに関わる人たちの経験を反復構造として物語に取り入れているあたりが目新しい。北村匠海の陰気すぎる雰囲気と、だいたい君、『君の膵臓をたべたい』でも同じ役回りだったじゃないかというあたりは、もうどうしようかと思ったのだけれど、永野芽郁の個人的ベストアクトだけでもお釣りが来るというものである。

邦画における難病ものも一時期の隆盛を誇った感があるけれど、2019年のこの作品が掉尾かも知れず、今となっては時節がこれを許さないであろう。優香と長谷川京子が出ているというのがかえって新鮮だったのだけれど、物語のラスト近くで長谷川京子が運転する車はシティ・カプリオレのように見え、あれは実際、稼働できる車両なのであろうか。

近視

さきの地震で水位が保てなくなり注水を増している福島第一原子力発電所から、今度はALPS処理水を海洋放出するという。愚行を強行しようというのがどうしてこのタイミングなのか分からないが、分からないだけに何か困ったことが起きているのだろうと邪推している。処理水といえば聞こえはいいが、英語ならcontaminated nuclear power plant waterであって、もちろん汚染水なのである。

震災の特番では原発事故の現場をサンドウィッチマンの二人に取材させていたけれど、ALPS処理水に含まれるトリチウムが国の基準を下回っていることを確認させていて、そこには何重ものごまかしがあるものだから、復興に力を注いでいる人間を利用して、NHKと東電も随分と罪深いことをすると思ったことである。

このALPS waterは取り除くことのできないトリチウムを含有しているばかりでなく、有象無象の核種を含んでいるだろうシロモノで、それを確認していないだけである以上は、風評被害だけでなく実際に起こるであろう汚染の成り行きを知ることは誰にもできない。COVID-19の対応もそうだが、検査をせず見て見ぬふりを基本動作として、愚かな目先の経済合理性で物事をすすめようとするこの国の近視眼的な習性は何なのか。