夏越の祓

今年も折り返しというこの節句に、できれば水無月をいただきたいと思うのだが当地にはその習慣がなくほぼ実現できたことがない。大学を京都で過ごした娘がその風流を弁えているのはいいものである。当地は梅雨というより、夕方にかけて雷雨が来る夏みたいな気候となり、カナダでは連日50度近いヒートドーム現象が観察されていると聞いては、この気候変動を年中行事で乗り越えられる気がしないけれど。

東京は1日の感染確認が700人を超えて本格的なステージ4となったが、非常事態宣言明けの姿がみえるのはこれより後ということになろう。

ペッパー

共同通信の配信で「ロボットペッパー生産停止」というニュースがあって、いやいや何を今さらと思わず日付を確認してしまったが、ご丁寧に「販売不振か」という推測まで書かれていて、これは一体、何を意図してのニュースフローなのかと訝しく思う。ペッパーが販売不振なのは5年も前からそうだったのだろうし、いまだに生産していたのだとすればそのことに驚く。投入は2014年で既に当時から危ぶむ見方は遭ったと思うのだけれど、2016年『逃げ恥』に顔を出したあたりで終盤のイメージがあったような。それでも、現在まで事業として存在していたとすれば、CEO肝煎りプロジェクトというのも功罪あると遠い目になる。

パンデミック日記

桜庭一樹の『東京ディストピア日記』は激動の2020年を思い返すためのよすがとして折りに触れて読み返しているのである。実際、愚行を繰り返しているだけのようで、あまりにも多くのことがあったので、読むたびに思い起こされることがあって飽きない。自分の日記を読んでそういえば、と思うことも多いのだが、酷い目に遭ったとしても、だいたい慣れてしまうというのは一面の真実である。

新潮の近刊に『パンデミック日記』というのがあって、52人の作家が1年52週の日記を書き継ぐという趣向で、いわゆる文壇の出来事など、以前のものは関心すらなかったのだけれど、この書名であれば読まないわけにはいかない。冒頭、正月を満喫している筒井康隆は呑気なものだが、徐々に高まる非日常の雰囲気は戦中日記に似て、この稗史も既に歴史的な価値がある。面白い。

そしてこの日、緊急事態宣言明けから1週間で東京はステージ4の水準に戻り、しかしオリンピックに向けてみて見ぬふりという思考停止の状況にある。対数軸の上昇は着実に進んでおり、やがて感染爆発の状況が到来するだろう。

クレイジー・リッチ!

Amazon Primeで『クレイジー・リッチ!』をなんとなく観る。2018年の製作であれば、もちろんパンデミックの予感は露ほどもなく、それだけでも何だか懐かしいと感じたほどだけれど、当時、主要キャストがアジア系のみであることが画期的であるとして持て囃されたことを考えると、世界はなんと遠くにきてしまったことかと、少し呆然としたのである。

アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領に対する反発が、ハリウッドを後押ししていたところはあるとして、その時代を脱してみればバイデン大統領の対中政策自体はそれをほぼ引き継いで洗練させているというのが今日の様相なのである。加えて、疫病によって表面化したアジア系に対する差別である。

過去の情報によれば、2020年に続編の2作が同時撮影される計画になっていたということだけれど、COVID-19の影響が鎮静化したとして、この三部作が完成に漕ぎ着ける気がしないのだがどうだろう。やはり世界はだいぶ変わってしまったと思うのである。

スイッチ

Netflixで『スイッチ』を観る。オンエアからほぼ1年を経てNetflixに登場というのは、おそらく作り手にとっても意外であったに違いなく、CM入りのタイミングでタイトルロゴが入る編集そのままなのだけれど、坂元裕二脚本で松たか子と阿部サダヲの共演になるドラマはもちろん再読の価値があって、今やこのレベルのドラマであれば事後の配信を前提に制作をするべきであろう。時代は変わった。

少し前にCraftというエディターを試して、小洒落た風貌だけで敬遠したようなところがあったのだけれど、WebサービスではなくiOSアプリを弄ってみるとNotionやRoam Researchのようなデータベース型のテキストアプリであることがわかって、おぉとなっている。サブスクだとBacklinkingも自由にできるのである。当初それがピンとこなかったくらいテキスト側に振っているつくりなのが特色といえ、それは望むところで、アプリ自体もよく出来ているので感心している。macOSでは「ヘルプ」の翻訳が「助けて」となっているのだが、インターフェイスの言語が選べるので大きな問題ではない。

どろどろ

東芝の定時株主総会で取締役会議長と監査委員会委員の取締役再任が否決されたこの日、経済産業省のキャリア官僚が家賃給付金の詐取容疑で逮捕、次いで同省の職員が国会議事堂の女子トイレで盗撮していたことが報じられる。いうまでもなく東芝の一件は、経済産業省と徒党を組んで株主提案権の行使を妨げようとしていたことを受けての事態である。一日本企業にとどまらないガバナンスの欠如を全世界に知らしめたのみならず、アタマどころか尻尾まで腐っていることを示す事例を次々に見せつけられては、もうなんと言ったらいいか。組織がダメだから国の経済と産業もダメになるのか、その逆なのかは措くとして、少なくともこうした輩にかかわる物事が好転するようには思えない。

模擬実験

我が国の誇るスーパーコンピューター富岳だが、コロナウイルスの飛散シミュレーションばかりしているのではないかという疑いがあって、本日もデルタ株の飛散を計算したというニュースがあったのである。社会的距離が2.5メートル程度あれば従来株とあまり変わらない感染確率であるというのはいいとして、空気感染を取り沙汰している今、このモデル自体は飛沫をシミュレートしているようにしか見えないのだが、これでいいのだろうか。東京ドームでも「飛沫実験」が行われたというのだけれど、そもそもかなり甘いであろう想定を重ねて喧伝することになった、このパブリシティの流れは一体、何なのか。

そして新規感染は増え続けており、首都圏の陽性率の高まりをみても、来週あたりには第4波発出の水準に向かうのではないか。またしても、やり直しなのだが、この調子ではその判断すら行われない可能性がある。