まともじゃないのは君も一緒

『まともじゃないのは君も一緒』を観る。『おかえりモネ』も毎日、楽しみにしているので、もう清原果耶のファンといってもいいのではないかと思う。成田凌とのダブル主演で旬の映画という感じだけれど、ストーリー自体はシンプルで演出もどちらかといえばストイックなので、ことの成否は役者の仕事にかかってくる。そしてもちろん、いい仕事をしているのである。特に清原果耶が。主人公の秋本香住が恋に落ちる瞬間はちょっとした見どころで、その後の展開を茶番にしていないのは演技の説得力ゆえであろう。成田凌もいい役回り。

この日、東京の感染確認は4,000人を超える。無論のこと東京にとどまらず各地で過去最多を記録する流れだが、非常事態宣言はただ状況が非常事態であることを言立てるためだけにあって、その収拾に役立っていないのは今や明らかとなっている。アナウンスメント効果を考えれば、オリンピック中止というのが最善手ということでよろしいか。

次の戦争

CDCがデルタ変異株を分析した内部資料の内容が報じられている。これまで言われていたことでもあるが、その感染力は水疱と同じレベルにあり、重症化のリスクが高く、ワクチンを接種済みの人間であっても同じように感染を広げる可能性がある。一番避けたかったはずのMask mandateがこの知見をもって復活することになった事実は重く、ワクチンだけではもとの世界には戻らないということを強く示唆する内容となっている。結局のところ、いわゆるブレイクスルー感染は考えられていたよりも多く起きているということだ。

どうして内部資料のリークというかたちでこうした見解が明るみに出たかについては政治的な介入が見え隠れするとして、流出したそれを真正であると認め、事実と科学の方法を尊重する基本的な価値観こそアメリカの強みであるには違いない。「次の戦争」を戦っているという現状認識の正しさが出発点となるだけで優位に立つことになる。もちろん、周回遅れでこのまま窮地に向かう本邦は、その基本においてこの10年、道を誤っているのである。

現実的

この日、全国の新規感染確認は1万人を初めて超える。首都圏の三県と大阪に非常事態宣言が出され、専門家はかつてない事態の到来を予告するが、政治家は語るべき言葉を持たず、もう打つ手がないという関係者の言葉が伝えられるばかりである。野党までが今さらオリンピックの中止は現実的でないと言い始め、いよいよ全体で思考停止に入ろうという展開となっている。オリンピックはステイホーム率を上げているという根拠のない虚言を都知事が述べるところをみても、今やこの狂騒を止める力学は働かず、行き着くところまで行った上で、さすがにまずいという事例が積み上がったのち自粛の作用が見え始めるということになるのだろうが、数ヶ月にわたって酷い状況が続くことだけは確かにみえる。

立憲民主党がオリンピックの中断について現実的でないという立場をとったことは記憶しておかなければならない。現状の是認が現実的であるというのであれば、野党はその役割をほぼ放棄しているということにはなるまいか。

武士スタント 逢坂くん!

TVerで『武士スタント 逢坂くん!』を観る。正直言って、長井短が出ているから観ただけなのだが、ナンセンスっぽい漫画原作をきっちり劇映画風に演出するこの重厚感が妙におかしい。深夜帯で20分ちょっとの尺がちょうどいいアクの強さはあるけれど、拾いもの。主人公を演じている濵田崇裕を知らなかったのだけれど、ジャニーズの人らしいと知って感銘を受けている。冒頭からかなりの冒険が必要となる役回りなのである。

この日、東京の新規感染確認は初めて3,000人を超え、全国でも1万人に迫る。一都三県は軒並み過去最多を更新して、1週間を待たずその数は倍になるはずである。各国ではデルタ株への対応と緩和路線の両立は不可能という認識がコンセンサスとなりつつあり、米国でのマスク義務も復活の流れ。同時にこの変異株の潜伏期間の短さと圧倒的なウイルス量の多さについての研究が定見となりつつあって、徹底したコンタクトトレーシングによってゼロコロナ戦略が成功している国でさえ、その状況を維持することの難易度は高くなっている。人の往来が復活するのはいつか、再び見通せなくなった時間帯に世界はあるのだが、本邦ではオリンピックである。事態を矮小化しようとする当局のあらゆる試みは現実が否定することになる。

連騰

こうなってくると検査能力の制約で実態が捉えられなくなるというのが、これまでのパターンではあるけれど、そこにオリンピック関係の検査が押し込まれているのだとすれば、現時点でもほとんど余力がないのではないか。そんななか、東京は1日の過去最多2,848人の新規感染を確認する。

あらゆる失策と無謀な強行が現在、首都圏にカオスを現出させている。総理大臣は人流が減っているからオリンピックの中止はないと公然と嘘を述べ、重症化を防ぐ新薬を積極的に使っていくなどと詐欺師の口上のようなことを言う。そこだけ参照しても、もう相当にヤバいということが分かろうというものである。かつてイソジンがどうのと言っていた府知事もいたが、アレと同じ種類の人間であるのは周知の通り。

イギリスでは感染拡大がピークを過ぎたかに見える推移となっているのだが、減少の中心は学校年齢の子供たちで、夏休みの開始がどうやらこれに寄与している。してみると、彼の国でもワクチンより行動抑制の方が依然、効果が大きいということになる。

想定内

トライアスロンという競技に取り組もうという人は、もとから鉄人と形容されるような身体能力と固い意思をもっているに違いないけれど、暑いと言って済ますにはあまりにも過酷な気候のなか下水と区別がつかない海を泳がされるとあっては同情を禁じ得ない。そのゴールに出来した地獄絵図は、8年前から分かりきっていたことの不作為の結果なのである。いやはや。

新たな感染確認もさらにペースを上げて増加しているなかで、しかし対策を打つどころか、政治家は皆、気配を消し、メディアもそれを問題とせずオリンピックの話ばかりしているのである。今週も驚くべき数字が積み上がることは明らかなのだが、それでもピークということにはならないだろう。大都市圏の医療は既に崩壊し、地方でも急ペースで感染が拡大するなかで、死者の数はこれから増えることになる。その機序自体はこの1年半、繰り返し学んできたはずのことだが、最大規模での再演がどこで頂点に達するかは現時点で予想がつかない。

オン・ザ・ロック

『オン・ザ・ロック』を観る。ソフィア=コッポラの監督・脚本で、AppleとA24の共同制作というだけで本作の雰囲気は伝わるというものだが、実際にだいたいそんな感じである。ビル=マーレイが娘の抱える夫の不倫疑惑に首を突っ込んでくる老父の役。ニューヨークを舞台に、どこか『ロスト・イン・トランスレーション』を想起せざるを得ないこの物語を、かつてよりも楽しそうに演じている。ほとんど会話劇で、それは自家薬籠中のものである。基本的にはコメディなので、読後感も悪くない。

Apple TV+では『テッド・ラッソ』の第2シーズンも始まっていて、その稼働率も上がっているのだけれど、相変わらずmacOSのクライアントは全然駄目で、40分おきに異常終了している。iPadOSでは悪くないだけに、Montereyで改善しているといいのだけれど。

東京の感染確認は日曜日で過去最多となり1,763人を数える。見かけの陽性率はちょっと異様なくらいに上昇し、一都三県の病床もほぼ満杯という状況で、この国の報道はオリンピックが先に来るのである。さすがにどうかしている。