スイスチーズ

再び非常事態に入る都下の新規感染者数は今後の増加を改めて予感させるもので、首都圏は前週に比べて1.2倍という傾向であれば、もちろん1週間を待たず倍加するペースである。専門家でもない客に感染対策を評価させようとしたり、酒類提供に対して金融機関から圧力をかけようとしたり、政府の振る舞いはだいたい見当外れの上に、不法の疑いがあって、ただ無能であることを超えている。

ヨーロッパはワクチン接種の進展にもかかわらず再び感染が急拡大していて、BBCは100%感染を止める手段がない以上、多重防御の対策を継続しなければならないという道理を解説しているのだけれど、今さらというより、これこそ報道の使命だと思う。それがワクチンであれ、単独の防御としては穴の空いたスイスチーズのように不完全であるという啓蒙は本邦にもあっていいが、あまり見かけない。しかるに、非常事態宣言そのものがワクチン接種の時間稼ぎであるという言説が台頭していて、多くの国がそうであるとはいえワクチン後の世界観はやはりミスリードされており、今後も迷走は続きそうだと思うのである。