米国での感染再拡大がそろそろ看過できない時間帯に来ている。ニューヨーク市では飲食店の利用にワクチン接種証明の提示を義務付ける動きがあり、これに抗議するデモが行われる。ワクチンの有効性を示すデータが多くある一方、副反応をはじめとするデメリットは確実に存在するわけだから、ワクチン接種を拒否する人が一定数いるのは健全であるといえるし、その一群を結果として排除することになる政策に抗議の声が上がるのも当然ではあるのだ。健康被害を結果として認めない政府の対応があるとすれば、それがどこの国であれ疑念を深めるだけの結果となるだろう。副反応の存在が否定されないのに、実際に因果関係が認められるケースが極端に少ないとなれば、信用しろということに無理がある。
公衆衛生に関わるメッセージというのはことほど左様に難しいものである。この日、IOCのバッハ会長が離日の前に銀座を散策して物議を醸し、それだけでもいかがなものかという話だが、丸川五輪相が不要不急かは本人が判断すべきと述べて駄目を押す。ほとんど自粛頼みで積み重ねてきた本邦の感染防御はここでも大幅に後退することになる。これまで検査抑制をすすめてきた分科会メンバーがここにきてしれっと発言を修正しているのが僅かな救いで、結局のところ「本邦独自の対策」から撤退しないことには展望は開けないであろう。